「5年後の自分を教えてください」に詰まる
就職活動の面接でも、転職活動の面接でも、「5年後どうなっていたいですか?」という質問がある。
そのたびに「答えを作って」いた。「○○のスキルを磨いて○○な人材になりたい」という、聞こえのいい答えを。
でも正直なところ、5年後の具体的なビジョンなんてない。
大きな目標を持っている人が羨ましい。「これを成し遂げたい」という強い動機で生きている人を見ると、「自分にはないな」と思う。しかも25歳という年齢は、「もうそろそろ方向性を決めないと」というプレッシャーを社会から受けやすいタイミングでもある。
「ゴールがない」は欠陥じゃない
まず言いたいのは、「人生の大きな目標を持っていない」ことは、欠陥でも怠けでもないということだ。
目標について語るメディアやビジネス書は「目標がある人」の視点から書かれている。「5年後・10年後のビジョンを持て」「夢に向かって進め」——これが正しいとされる。
でも目標を持つことが「正解」で、持たないことが「間違い」という前提は疑っていい。
目標がない状態で、誠実に日々を生きている人はたくさんいる。そもそも人生の目標は「見つけるもの」より「気づくもの」に近く、20代のうちはまだ経験が積み重なっている途中だ。
「目標がない」と感じやすい背景
- SNSで「〇〇を達成した」という他者の投稿を毎日見る環境
- 学校・就活・職場で「将来像を言語化する」ことを繰り返し求められる
- 「夢を持て」という自己啓発コンテンツが溢れている
こうした環境に長く晒されていると、「目標がない自分はおかしいのではないか」という罪悪感が自然と育ってしまう。でもそれは環境が作った感覚であって、事実ではない。
「目標がない」と「方向性がない」は違う
目標は「具体的なゴール」で、方向性は「向かいたい感覚」だ。
「マネージャーになる」「年収○○万円にする」という目標はなくても、「もっと自由に働きたい」「人の役に立つことがしたい」「何か自分で作りたい」という方向性はある人が多い。
方向性さえあれば、目標がなくても前進できる。コンパスがあれば、地図がなくても歩ける。
| 目標 | 方向性 |
|---|---|
| 「30歳までに年収500万円」 | 「お金の不安をなくしたい」 |
| 「マネージャーに昇進する」 | 「人をまとめる仕事が向いている気がする」 |
| 「起業して独立する」 | 「誰かに決められた枠の中で働くのが窮屈」 |
目標を言語化できなくても、方向性の感覚なら持っている人は多い。まずそこから出発していい。
「方向性」の見つけ方
①「何が嫌か」を明確にする
「やりたいこと」が見えにくいなら、「やりたくないこと」を明確にする方が簡単だ。
- 「同じことを繰り返すだけの仕事が嫌」→ 変化のある仕事が向いている
- 「誰かに指示されてばかりは嫌」→ 自律性がある環境が向いている
- 「成果が見えない仕事が嫌」→ 結果が可視化される仕事が向いている
「嫌だ」を積み上げると、「こっちではない」の地図ができる。地図のネガが見えると、「こっちかも」の輪郭が浮かんでくる。
②「引っかかるもの」を大切にする
仕事の記事を読んでいて「なんか気になる」分野がある。友人の話を聞いて「なんか羨ましい」職業がある。映画を見て「こういうことやってみたい」と思う瞬間がある。
これらの「小さな引っかかり」を、無視しないでメモしておく。積み重なると、「自分が繰り返し何に反応しているか」が見えてくる。それが方向性の素材だ。
③「振り返り」で方向性を見つける
半年前・1年前と比べて、「これをやってよかった」「これは自分に合っていなかった」を振り返る。過去の「よかった」の共通点が、自分の方向性を示していることがある。
目標は「前」から見つけるだけでなく、「後ろ」から見えることもある。
④小さく試して感触を確かめる
「本当にやりたいかどうか」は、やってみるまでわからないことも多い。副業・ボランティア・社内異動・オンラインコースなど、低コストで「向いているか」を試せる手段は今の時代にはたくさんある。
大きな決断の前に、小さな実験を重ねることが方向性を具体化する近道だ。
「目標なし」でいいという許可
目標がなくても、誠実に今日を生きることはできる。
「何のために生きているか」という問いに、明確な答えがない状態でも、目の前の仕事を丁寧にやることはできる。好きな人と時間を過ごすことはできる。少しずつ自分を理解していくことはできる。
そういう積み重ねが、5年後振り返ったとき「これが自分の道だったんだな」と気づく材料になる。
「今すぐ答えを出さなければ」という焦りより、「今日一日を誠実に過ごす」方がずっと建設的だ。目標がない罪悪感で自分を責め続けることは、前進のエネルギーを消耗させるだけでメリットはない。
関連する悩みとして、「やりたいことが何もない」という感覚や20代特有の漠然とした不安についても読んでみると、自分の状態を整理するヒントが得られるかもしれない。
目標がない自分を責めなくていい。「どこに向かいたいか」のコンパスがあれば、それで十分に前進できる。
よくある質問
Q. 25歳で目標がないのは普通ですか?
よくあることです。内閣府の調査でも、20代の多くが将来の見通しに不安を感じていると報告されています。目標がない状態は欠陥ではなく、「まだ探している」段階と捉えるほうが実態に近いでしょう。焦って「答えを作る」より、方向性の感覚を育てていく方が長期的には有効です。
Q. やりたいことが見つからないとき、何から始めればいいですか?
「やりたいこと」より先に「やりたくないこと」を書き出すのが手軽です。嫌だと感じる仕事・環境・働き方を列挙すると、自分に合う方向性の輪郭が見えやすくなります。完璧な答えを探すより、「これは違う」を積み上げる方が現実的です。
Q. 目標なしで転職活動をするのは不利ですか?
面接での「5年後の自分」は、大きな夢でなく「こういう方向に成長したい」という方向性で答えても問題ありません。重要なのは自己理解の深さです。「なぜそう思うのか」を言語化できれば、具体的な目標がなくても採用担当者に響く回答になります。
Q. 人生の目標はいつまでに決めるべきですか?
決めなければならない期限はありません。目標は探しながら生きる中で、後から言語化されることも多いです。焦りより、日々の小さな「好き・嫌い」の観察を積み重ねる方が有効です。「30代になってようやくやりたいことが見えた」という人も珍しくありません。